◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.183-2013.05.07
      
  ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

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こんにちは、エキスパーツリンク/エキスパーツ税理士法人の紺野です。日本
の会計基準は、今、IFRSで揺れ動いています。一方で税制も改正されており、
上場会社及び上場準備会社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく
変化していきます。これらのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理
担当者の皆さん向けに、出来る限り分かりやすくお伝えします。仕事の合間に
軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は僕の私見にもとづきます。このメールマガジンの情報
をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等にご確
認ください。もちろん、エキスパーツリンク/エキスパーツ税理士法人でもま
ずは無料で検討させていただきます。

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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[IFRS]任意適用要件緩和等
2.[税務]消費税経過措置Q&A
3.[最新J-GAAP]税効果会社区分3と4の関係について
4.[税務]問題95
5.[編集後記]

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1.[IFRS]任意適用要件緩和等
===================================
企業会計審議会は、平成25年4月23日、総会・企画調整部会合同会議を開催し
ています。このなかで、会計基準アドバイザリー・フォーラムの報告、及び国
際会計基準への対応について当面検討すべき課題が話し合われています。

【会計基準アドバイザリー・フォーラムの報告】
報告資料はこちら
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/soukai/20130423/01.pdf

二点ほどお伝えしようと思います。

まずは包括利益についてです。
「・ASAF メンバーからは、純損益の概念を維持することについては概ね支持
が示されたが、純損益の概念(primary picture やfinancial performance
の意味を含む。)を明確化すべきという意見や、純損益に関する原則と測定
に関する原則の関係を明確化すべきといった意見が示された。また、OCI に
ついては、各基準でOCI を用いるか否かについて整合性が図れるよう概念フ
レームワークにおいて解決すべきであるとの意見や、OCI は純利益に含まれ
るnoise を減らすために用いるべきとの意見等が示された。
Bridging Item とMismatched remeasurement については、両概念を統合
すべき、あるいは、分けるべきとの意見とともに、固定資産の再評価に関連
して、資本維持概念との関係を整理すべきなどの様々な意見が示された。」

ここでいうprimary pictureはfinancial performanceの主要な像ということ
だそうです。

Bridging itemとは、
「認識される資産又は負債が2 つの異なる測定基礎(1 つは財政状態計算書
における使用のための(原価に基づかない)測定基礎、もう1 つは純損益に
おける使用のための測定基礎)を有するべきであるとIASB が決定する場合
に、橋渡し項目は生じる。
橋渡し項目の一例は、一部の負債性金融商品を財政状態計算書では公正価値
で測定するが、純損益では償却原価で測定するというIASB の提案である
橋渡し項目に該当するOCI は、原則3 に沿って、OCI の金額は、純損益に表
示する測定基礎と整合する方法(時期及び金額)で純損益へリサイクルすべ
きである。」

Mismatched remeasurementsとは、
「再測定のミスマッチが生じるのは、収益又は費用の項目が経済現象を非常
に不完全しか表さないことにより、当該収益・費用項目を純損益に表示する
と当該期間の企業の財務業績の評価にほとんど又は全く目的適合性のない情
報を提供することになる場合である。
したがって、当該項目をOCI に表示する方が、当該期間における財務業績
のより適切な描写となる。再測定のミスマッチの一例は、適格なキャッシュ
フロー・ヘッジ関係におけるデリバティブの再測定に関して生じる利得又は
損失であろう。
再測定のミスマッチに関連するOCI の金額は、関連する取引から生じる収益
及び費用と一緒に表示できる時点で、純損益へリサイクルすべきである。」

当該資料にまとめられている表には、両者のいずれに該当するか不明なものも
含まれており、いずれにも該当しないなどと分類されているものもあります。
概念導入の可能性を検討してはみたものの、いまだ不完全な段階といったとこ
ろでしょうか。

続いて、有用な財務情報の質的特性に関連して、慎重性(保守主義)について書
いておきます。

質的特性に関しては、現行フレームワーク上、基本的な質的特性は、「目的適
合性」及び「忠実な表現」であるとされ、補強的な質的特性として、「比較可
能性」、「検証可能性」、「適時性」及び「理解可能性」が挙げられています。

で、慎重性(保守主義)に関してなのですが、慎重性(保守主義)については、

「現行の会計基準でも用いられているものであり(減損等)、少なくとも「有
用な財務情報における質的特性」の結論の背景を修正すべきである。」
とされています。

慎重性(保守主義)は、2010年の概念フレームワークにおいて、中立性と矛盾す
るため、忠実な表現の要素として含めないこととされた経緯があります。その
結論の背景は以下です。

「資産、負債、収益又は資本の保守的な見積りを慎重に反映することは、過度
に楽観的と感じられてきた一部の経営者の見積りの影響に対抗するために望ま
しいと考えられてきたこともあった。しかし、現行のフレームワークに現れて
いる意図的な誤表示の禁止があっても、なお慎重であれという勧告は偏りにつ
ながる可能性が大きい。ある期間において資産の過小表示又は負債の過大表示
を行うと、その後の期間において財務業績の過大表示につながることが多い。
これは慎重であるとも中立的であるとも記述することのできない結果である
(BC3.28)。」

日本では過度な保守主義などと言われているものですね。確かにその後の業績
の過大表示につながる可能性がありますので、なんでもかんでも落とせばオッ
ケーみたいな考え方はミスリードを招く可能性がありますので、財務諸表作成
側も、監査側も慎むべきと思います。しかしながら、少なくとも会計基準とし
ては、資産の評価の妥当性について、疑義が生じている場合には、経営者の過
度な楽観を牽制し、慎重性(保守主義)の観点からの考慮がなされるような表現
を入れておくべきなのではないでしょうかね。どうでしょうか。

【国際会計基準への対応について】
金融庁も積極的になってきたのでしょうか。合同会議は4-6か月に一回位のペー
スだったのが、今回は前回開催後の一か月後の開催となったようです。

Itproの記事
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20130423/473089/

会議の資料はこちらです。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/soukai/20130423/02.pdf

この検討の方向なのですが、紙面が長くなってしまいますので、かいつまんで
記載します。詳細は上記資料ご参照ください。

(上記資料より概略を記載)
「・単一で高品質な国際基準を策定するという目標がグローバルに実現されて
いくことは、有効であり、協力が必要。
・日本基準のコンバージェンスによる高品質化は引き続き必要。
・日本のIFRSに対する立場が不明確との指摘があるので、より明確にすべき。
・ただ現行IFRSには基本的考え方として受け入れ難い項目、日本の企業経営に
 そぐわないもの、導入コストが過大なもの、開発中のものがある。
・米国の動向に注意が必要。
・我が国企業のIFRS適用の予見可能性を高めるべき。
・IFRS導入のメリットとコストのバランスは区々である。」

「・まずは任意適用企業の積み上げが必要。要件の緩和か。
・原則主義の不確実性にどう対応するか。
・サテライトオフィスの有効活用。
・指定国際会計基準のほかに個別基準を一つ一つ検討して採択するプロセスを
 設ける必要があるのでは。
・IFRSの個別基準適用の是非を具体的に検討する必要があるのでは(筆者注;カ
 ーブアウトを示唆?)
・単体開示を廃止する方向性をどう考えるか。」

上述のItproの記事によると、任意適用要件の緩和については、委員はほぼ同意
したようです。現在、適用済み、適用方針公表済みの企業は17社にとどまりま
す。日本経済団体連合会の推計では約60社ということですが、まだまだ少ない
ですよね。

カーブアウトについてですが、カーブアウトを認める場合、会計基準が日本基
準、米国基準、Pure IFRS、カーブアウトIFRSの四種類になってしまうというこ
とです。基準は基準であり、基本的に基準が複数あっては基準ではないですよ
ね。ここはもう少し議論を深めていただきたいものです。

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2.[税務]消費税経過措置Q&A
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国税庁では、平成25年3月25日、「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲
渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについて(法令解釈通
達)」のQ&Aが先日出されました。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/kaisei/pdf/2191.pdf

引き続きご紹介します。かいつまんで記載しますので、実際の適用にあたって
は上記本文を参照してください。

(問5)平成26年3月中に販売したもので同年4月に返品されたものの取扱
【答】
旧税率で差し支えない。請求書等には適用税率の明記が必要。

(問6)旅客運賃等の税率等の経過措置
【答】
入場料金を施行日前に領収している場合において、施行日後に資産の譲渡等が
行われる場合、旧税率が適用される。
対象の範囲は以下のとおりです。
・汽車、電車、乗合自動車、船舶又は航空機に係る旅客運賃(料金を含む。)
・映画、演劇、演芸、音楽、スポーツ又は見せ物を不特定かつ多数の者に見せ、
 又は聴かせる場所への入場料金
・競馬場、競輪場、小型自動車競走場又はモーターボート競走場への入場料金
・美術館、遊園地、動物園、博覧会の会場その他不特定かつ多数の者が入場す
 る施設又は場所でこれらに類するものへの入場料金

といった具合です。

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3.[最新J-GAAP]税効果会社区分3と4の関係について
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繰延税金資産の回収可能性は監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能
性の判断に関する監査上の取扱い」に従って処理されます。この委員会報告第
66号では、会社の業績等の状況に応じた例示区分別の将来年度の課税所得の見
積額による繰延税金資産の回収可能性の判断指針を示しています。この例示区
分の5段階もかなり実務家の間では認識が広まったのではないでしょうか。

ここでちょっとまとめておきたいのは例示区分3と4の関係です。

3;業績が不安定であり、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの
 課税所得がない会社等
4本文;重要な税務上の繰越欠損金(発生が非経常的な特別の原因である場合を除
 く)が存在する会社等
4但書;重要な税務上の繰越欠損金(発生が非経常的な特別の原因である場合)が
 存在する会社等

従来3区分で処理してきたある会社が欠損金を計上したとします。すると、3区
分ではなく、4にあたるのではないかという検討が必要になります。ここで検討
すべきは、

(1)繰越欠損金が「重要」な繰越欠損金にあたるかどうか
(2)発生が非経常的な特別の要因であるかどうか

です。

(1)繰越欠損金が「重要」な繰越欠損金にあたるかどうか
委員会報告第66号は具体的な判断基準を示していません。会社の過去の経常的
な損益及び課税所得の発生状況等を踏まえ、将来の損益見込み及び課税所得の
発生見込みも斟酌して総合的に判断すべきことになると思われます。例えば当
期に発生した繰越欠損金は多額ではなくとも、翌期に多額の繰越欠損金の発生
が見込まれる場合などは、「重要」概念に該当すると考えるべきなのではない
でしょうか。

(2)発生が非経常的な特別の要因であるかどうか
「重要」という判断になった場合、その「非経常性」を検討することになりま
す。委員会報告第66号は、「事業のリストラクチャリングや法令等の改正など」
を例示しているため、景気の悪化、株価水準の下落、商品価格等の下落、需要
の減退当、会社の事業上経常的に起こりうる原因はこれに該当しないといわれ
ていますので、この非経常性に該当するとの判断は慎重に行うべきとされてい
ます。

3から4本文に転落するとかなり影響が大きいですから、ご留意ください。個人
的にはこの間にワンクッションあってもいいように思います。3年とか。

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4.[税務]問題95
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[問95]
次のうち、正しいのはどれ?

[答]

a.法人がゴルフクラブに対して支出した入会金については、いかなる場合であ
 っても資産計上する必要がある。
http://clap.mag2.com/hesouwraga?a

b.レジャークラブの入会金は繰延資産として償却できる場合もある。
http://clap.mag2.com/hesouwraga?b

c.ゴルフクラブ及びレジャークラブを除く社交団体に法人会員として入会する
場合、入会金いかなる場合であっても資産計上する必要がある。
http://clap.mag2.com/hesouwraga?c

[前回の解答]
前回の正答はbです。

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5.[編集後記]
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世界は20世紀までの大きな争いを経て、ようやくお互いがお互いを理解しはじ
めたのではないでしょうか。インターネットの普及や移動手段が身近になった
こと等もあり、外見や雰囲気だけではなく、言葉や映像を通じ、相互に理解を
深めてきたように思います。その中で世界は多様性を保ちつつ、共通化すべき
ものは共通化していくことになるんでしょうね。TPPなどにより今後より世界
は身近になっていきます。この過程において企業経営の写像である会計なんて
もののルールは単一であるべきという考え方はよく理解できます。IFRSの導
入議論において逆に4つの基準が議論されるなどという事態はこの本来の純粋
な目的が忘れさられているように思います。IFRSをよいものにしていく努力は
継続しつつ、不利な数値がでる会社はその説明をすべきなのではないでしょう
か。ルールってそういうもんですよね。

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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
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