◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.287-2015.05.21
      
   ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。

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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]国際税務入門15
2.[最新J-GAAP]のれんの償却に関するリサーチ
3.[税務]リバースチャージが適用されるもの
4.[IFRS]顧客との契約から生じる収益1年延期
5.[最新J-GAAP]統合報告の国際事例研究
6.[編集後記]

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1.[税務]国際税務入門15
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 国際税務担当飯田の記事です。
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タックス・スペアリング・クレジット(みなし外国税額控除)

我が国が締結した一部の租税条約では、実際には相手国において納付されてい
ない外国法人税(所得税)を納付したものとして、外国税額控除の計算を行う
ことのできる制度を定めているものがあります。これをタックス・スペアリン
グ・クレジットと言います。みなし外国税額控除とも言われ、実質的に実効税
率を引き下げる効果があります。

例えば、相手国の優遇税制により、相手国で課税される源泉所得税が20%か
ら10%に軽減されていても、日本で最終的に日本の税率で課税されてしまう
と、海外での税率優遇の意味がなくなってしまいます。タックス・スペアリン
グ・クレジットとは、これらの規定がない場合に納付すべき金額で納付したと
みなすもので、差額が実際に納付されていなくても、外国税額控除の計算上、
控除対象として計算することができる制度です。
 
実効税率の引き下げは、タックス・スペアリング・クレジットが認められた租
税条約の相手国の投資を促す効果が期待されることから、租税条約にこの規定
が導入されていました。以前は新興国との間における租税条約でこの規定が置
かれていましたが、近年は縮小される傾向にあり、現在この制度を定める租税
条約は、対ザンビア、スリランカ、タイ、中国、バングラディシュ、フィリピ
ン、ブラジルのみとなっており、このうち実務上多く利用されるのは、中国と
ブラジルのようです。

中国との租税条約においては、日本の外国税額控除の適用上、中国で実際に課
された税率にかかわらず、使用料について20%の税率で課されたものとみなさ
れます。
また、ブラジルとの租税条約では、利子にかかる税金について20%の税率で
課されたものとみなされます。証券会社のWebサイト等で、ブラジル国債など
の金融商品を見かけることがあると思いますが、高金利のほかに、「みなし外
国税額控除対象商品」などといった、税制面の優遇措置も強調されているよう
です。
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2.[最新J-GAAP]のれんの償却に関するリサーチ
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ASBJは、2015年5月19日、リサーチ・ペーパー第1号「のれんの償却に関す
るリサーチ」を公表しています。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/iasb/discussion/discussion_research/20150519.shtml

(1) 公開されている開示情報及び日本の大手上場企業に対するアンケート調査
への回答によると、多くの企業結合で5年が償却期間とされていることが
多かった。しかし、大規模な企業結合から生じたのれんについては、多く
の企業が、のれんに期待される長期の効果を反映するためにより長い期間
(例えば、10年や20年)が償却期間であるとされていた。

(2) 学術文献の限定的なレビューを行った結果、学術論文の研究成果によって、
減損のみのアプローチの方が償却及び減損アプローチよりも優れていると
結論を下すことは、少なくとも、困難であると考えられた。

(3) わが国の財務諸表利用者の過半数が、償却及び減損アプローチを支持して
いた。

お分かりのことと思いますが、「減損のみのアプローチ」はIFRSやUS-GAAPで、
「償却及び減損アプローチ」はJ-GAAPですね。

IFRSやUS-GAAPは学術文献の研究成果に沿っていないということなんですかね。

いずれにしても、非償却であることをねらって、わざわざ、IFRS等を選定す
る向きがあるような状況は好ましくないですよね。

やはり基本的に統一が望ましいんじゃないでしょうか。企業の置かれている環
境、すなわち、上場・非上場の別、ステークホルダーの多さ、規模等から会計
処理が異なることはあってもいいとは思いますが、国によって会計が異なると
いうのはやはり、好ましくないと思います。いつまでも議論していることが正
しいのかどうか、という気もしてきます。

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3.[税務]リバースチャージが適用されるもの
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このメルマガでは、以前からしつこい位お伝えしていますが、

平成27年10月1日から、国外事業者が行う「事業者向け電気通信利用役務の
提供」について、当該役務の提供を受けた国内事業者に申告納税義務が課せら
れます。これをリバースチャージといいます。

ただ、経過措置がありますので、当分の間は、当該課税期間について一般課税
(簡易課税ではなく)で申告する場合で、課税売上割合が95%未満である場合の
み適用があります。

で、この「事業者向け電気通信利用役務」ですが、範囲が明らかになってきた
と週刊税務通信No.3360が報じています。

(電気通信役務の提供)
・電子書籍、電子新聞、音楽、映像、ソフトウェアなどの配信
・クラウド上のソフトウェアやデータベースなどを利用させるサービス
・インターネット等を通じた広告の配信・掲載
・インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させる
サービス
・インターネット上でゲームソフト等を販売する場所(Webサイト)を利用させ
るサービス
・インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト
・インターネットを介して行う英会話教室
・収集・分析した情報をインターネットを通じて閲覧させたり利用させるサー
ビス
 ↓
代表的なものは、ネット広告の配信サービスだそうです。

(電気通信利用役務の提供に該当しない取引例)
・ソフトウェアの制作など、例示されています。具体的には税務通信を参照し
てください。

それでは、「事業者向け」とはどのようなものなのでしょうか。

要は、
○利用者が事業者に限定されているもの(役務の性質)
○利用者が事業者に限定されていなくても、個別契約により役務の提供を受け
る者が事業者であることを特定したうえで提供されるもの(取引条件等)
が該当します。

例えば、クラウドサービスは、個人契約もありうるのですが、事業者が個別に
契約し、その契約に基づいて提供されるものは、取引条件等から事業者間取引
であることが明らかなので、事業者向け取引ということになるようです。

ここが難しいようです。

事業者が、電子書籍を一冊購入する場合は、事業者向けには該当しない。

 一方で、

事業者が、電子書籍を大量に購入する場合に一定のディスカウントがされた金
額を取引価額とする”個別契約”が締結される場合は、事業者向けに該当する。

ようですので、ご注意ください。

基本的にリバースチャージの対象となる場合は、国外事業者が予めその旨を表
示しなければならないとされていますけれども。

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4.[IFRS]顧客との契約から生じる収益1年延期
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IASBは2015年5月19日、IFRS15「顧客との契約から生じる収益」の適用を1
年延期して、2018年1月からとする公開草案をだしています。

http://www.ifrs.org/Alerts/PressRelease/Pages/IASB-calls-for-feedback-on-proposal-May-2015.aspx

この基準はアメリカのFASBと共同で2014年5月に出されていますが、その際
の適用期日は2017年1月1日からとされていました。この期日を1年延期しよ
うというものです。

(主な理由)
IASBは現在この基準の修正公開草案を出すことを計画しているからです。これ
は、FASBとの共同の移行リソース・グループでの議論に基づき、要求事項の
いくつかを明確にすることや、履行を補助する事例を追加することを含むこと
になります。FASBもまた同様の基準の適用を1年延期することを提案してい
るところです。

じっくり議論してもらって、いいものにしてもらいたいですね。日本も同様に
検討し始めるはずです。いずれ、日本基準でも海外と同じような認識基準にな
ると思いますよ。

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5.[最新J-GAAP]統合報告の国際事例研究
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日本公認会計士協会(経営研究調査会)は、平成27年5月18日付で経営研究委
員会研究報告第55号「統合報告の国際事例研究」を公表しています。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/55.html

2013事業年度を対象とする海外の年次報告書を対象とし、統合報告の実務動
向について調査・検討した結果をとりまとめたものです。

ご参考ください。

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6.[編集後記]
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大阪都構想。気になって開票速報見ていた方も多かったのではないでしょう
か。NHKの開票速報は最初のうちは反対が多数でしたが、その後早い段階で賛
成が多数に転じ、その後は、ずっと賛成多数が続いていました。その間反対が
賛成を上回ることはなかったように記憶しています。このため、賛成が優勢な
のかな?と思っていました。大阪の均等割の申告書が東京みたいになるのかな
?二か所に納付する必要なくなるのかな?などしょうもないことを考えながら
見入っていたのですが、開票最後のほう80%???90%???超えてましたでしょう
か?画面の表示は賛成の方が多いのに、反対の確定報道がなされ、それからし
ばらくしても賛成の方が多かったように記憶しているのですが、そうでしたよ
ね?何か、変だな、反対確定っていっても画面上の獲得票数は賛成のほうが多
くないですか?多いよね。などと思いながら見ていました。その後みるみる反
対が増えていったわけですが。私は、別に特に賛成を押していたわけでもない
つもりでしたが、何か「本当かあ?」と疑いたくなるような気にさせられまし
た。私だけでしょうか?最後に反対が得票を伸ばしたのは間違いないですね。
不思議な感じを持っています。
それにしても結果は僅差でした。ネット投票があったら、、、どうだったでし
ょうか?

公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。

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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
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