◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.338-2016.05.30
      
    ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。

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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]移転価格税制に係る文書化制度のあらまし
2.[税務]消費増税「19年10月に」
3.[最新J-GAAP関連NEWS]のれん及び減損に関する定量的な調査
4.[税務]別表六(一)の様式
5.[NEWS]同一監査人による監査期間を開示へ
6.[編集後記]

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1.[税務]移転価格税制に係る文書化制度のあらまし
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国税庁はこの4月に、「移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあら
まし」を公表しました。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

OECDのBEPSプロジェクトの勧告(行動13「多国籍企業情報の文書化」)を踏
まえたもので、平成28年度の税制改正により移転価格の文書化制度が整備さ
れたことによるものです。

具体的には、直前会計年度の連結総収入金額1,000億円以上の内国法人等は、
「多国籍企業グループが作成する文書」として、最終親会社等届出事項、国別
報告事項及び事業概況報告事項をe-Taxで国税当局に提供しなければならな
いこととされました。こちらは、平成28年4月1日以後に開始する事業年度か
ら適用されます。

また、「国外関連取引を行った法人が作成する文書」として、国外関連取引の
合計金額が50億円以上又は無形資産取引の合計金額が3億円以上である法人
は、国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために必要と認められる書
類を確定申告書の提出期限までに作成し、保存しなければなりません(同時文
書化義務と言います)。こちらは、平成29年4月1日以後に開始する事業年度
から適用されます。

いよいよ日本にも本格的な文書化義務が規定されたという感じですが、お隣の
中国では2008年から必須になっていて、原則として関連者間取引が2億元以
上ある会社は、毎年5月末日までに移転価格文書を準備しなくてはなりません。

中国では、小規模な企業でも、機能・リスクが限定された外資系企業が赤字の
場合は、その理由を問わず移転価格文書を提出する必要があります。赤字の会
社でも移転価格課税が行われます。受託生産などを行っている会社は、子会社
は親会社のための仕事しか行っていないのだから赤字になるのはおかしい、赤
字の責任は親会社の責任である、という論理です。

日本でも文書化の免除規定はありますが、免除規定があるからといって作成し
なくてもよいというのではなく、税務調査時に要請があった場合は、60日以
内に提出しなくてはなりません。
我が社は文書化義務の対象外と思っていても、移転価格の文書化は簡単にはい
きません。海外子会社との取引がある会社は、移転価格のリスク分析をお勧め
します。

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2.[税務]消費増税「19年10月に」
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今度は本当のようですが、どうなるのでしょうか。

日本経済新聞は2016年5月29日朝刊で、
「安倍晋三首相は28日夜、2017年4月に予定する消費税率10%への引き上げ
について、19年10月まで2年半先送りする意向を政府・与党幹部に伝えた。」
と伝えています。

日経有料記事
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160529&ng=DGKKASDE28H07_Y6A520C1MM8000

ご存知のように、伊勢志摩サミットで安倍首相は、「世界経済はリーマン・シ
ョック前に似ている」との景気認識を共有すべく、様々な経済指標を提示した
ようです。安倍さんは消費税について、「リーマン・ショック級、大震災級の
事態にならない限り予定通り引き上げていく。」という考え方を繰り返し述べ
ていましたので、消費増税再延期をしようとの思いから、サミットで「リーマ
ン級」だという認識を共有したかったのでしょう。ただし、サミットでは十分
な理解は得られなかったようです。

しかし、「リーマン級」。もしかすると特に日本を取り巻く環境としては、正
しいのではないかと私は思っています。もちろん中国の話ですが、中国の不良
債権問題は、まさにサブプライムローンと同じ様相を呈しているといわれてい
ます。中国は、2008年のリーマン・ショック後、約68兆円(!)の景気浮揚策を
行っています。うち、中央政府が投じた額は約3兆円で、ほとんどは地方政府
や国有企業に資金調達をやらせています。この地方政府や国有企業は、シャド
ウバンクから融資を受けて資金を調達しています。このシャドウバンクはどの
ように資金調達しているかというと、高金利商品を販売して集めています。い
わゆる「理財商品」というやつです。その意味でサブプライムローンと同じ様
相を呈しているわけです。そして今やご存知のとおり、虚飾にまみれていると
おもわれるGDPも頭打ちになり、目に見える指標はマイナスの数値も出てきて
おり、ゴーストタウンも生まれています。日本のように透明度が高くないこと
から顕在化に時間がかかっているだけで、相当膨らんでいると考えるのが自然
なように考えています。中国のバブルが本当にはじけたら、まさに「リーマン
級」です。

再延期なら、衆議院を解散すべきだ(私もそう思います。)、とか、首相の任期
を超える、とか、難しい問題があるようですので、簡単ではないでしょうけれ
ども、やはり、増税延期の可能性は高まっているように思います。

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3.[最新J-GAAP関連NEWS]のれん及び減損に関する定量的な調査
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これは面白いです。

ASBJは、「のれん及び減損に関する定量分析」と題する調査報告書を国際
会計基準審議会(IASB)に提出し、説明を行いました。IASBからの依頼に応じた
ものだそうで、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)と協力して、日・米・欧・
豪の4か国・地域におけるのれんの残高の推移等に関するデータを分析したも
のです。

第336回企業会計基準委員会の資料としてこれがありますので、ご参考くださ
い。

https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/minutes/20160511/20160511_index.shtml

2014年の一社あたり平均のれん金額です。

アメリカ   56億ドル
ヨーロッパ  53億ドル
日本      4億ドル
オーストラリア10億ドル

もう全然違いますね。日本は欧米の10分の1以下です。

のれんの純資産に対する割合はどうでしょう。2007年から2014年の平均です。

アメリカ   34%
ヨーロッパ  31%
日本      4%
オーストラリア21%

極め付けは、のれん期首残高/のれん減損額()でしょう。何年で償却できる
か、ということになりますね。

アメリカ   130.5年
ヨーロッパ   82.8年
日本      11 年
オーストラリア 75.2年

これは恐ろしい位ですね。株価に影響していないでしょうか。
日本の株価が割安なのか、欧米の株価が割高なのか、ということにつながって
いるのではないでしょうか。

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4.[税務]別表六(一)の様式
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もう皆様すでにご案内のことかもしれませんが、平成28年1月1日以降終了事業
年度から、法人税申告書別表六(一)の様式が変更されています(平成28年4
月1日以降終了事業年度分はまたさらに様式が更新されています。)。
従来の別表六(一)に記載されていた、
利子及び配当等に係る所得税額の控除に関する部分と、剰余金の配当等の控除
を受ける所得税額の計算に関する部分が分離されて、別表六(一)と別表六(一)
付表に区分されています。

別表六(一)
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2015/pdf01/06_01.pdf

別表六(二)
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2015/pdf01/06_01_f.pdf

これは平成28年1月1日より法人に対する利子割が廃止されたことに伴い、平
成28年1月1日前の期間と平成28年1月1日以後の期間とで支払を受けた分に分
けて記載するものとされたためです。

些細なことかもしれませんが、平成28年1月1日前のものとそれ以後のものと
に区分して集計する必要がありますのでご注意ください。

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5.[NEWS]同一監査人による監査期間を開示へ
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産業競争力会議では、「日本再興戦略 2016」(素案)が示されています。

http://www.tabisland.ne.jp/news/news1.nsf/2a03c8904e6f853f492564990021bb43/d91d67244267b8e949257fbf00834470?OpenDocument

「ここで注目したいのが、「会計監査に関する株主等への情報提供」の充実。
すなわち、「監査人の選解任に係る株主の判断が適切に行われるよう、企業が
同一の監査人による監査を受けてきた期間など、企業等による会計監査に関す
る開示を充実させる」措置だ。」

現行法では、特に監査法人自体のローテーションは定められておりません。上
場会社の監査を担当する主任会計士のローテーション・ルール(継続監査期間
7年、インターバル期間2年)というのが公認会計士法にあります。これが継続
監査期間5年、インターバル期間5年の方向で検討されているところです。

面白い開示をしているところもあるようです。
「なお、この6月株主総会で「公認会計士等の異動」を公表(適時開示)した
上場会社には、その理由として「現会計監査人の継続監査年数を考慮し」た旨
の記載が散見された。日本通信(株)に至っては、「企業と監査法人とは一定
の緊張関係を持ち続けることが重要であるという観点から、本来であればグロ
ーバルスタンダードである5年から7年を目処に監査法人の交代を行うことが
適切であると考えています。しかしながら、適格な監査法人及び公認会計士の
数が不足している日本においては、その通りに実践することは難しいのが現状
です。しかし、どんなに長くても9年を超えることは異常な状況であると考え
ており、従って、当社は、過年度においても9年を上限に監査法人の交代を行
ってきました~」と開示している。」

一般に監査法人の変更は困難を伴いますのでつい現状に甘えてしまいそうです
が、私もやはり一定期間で変更するほうが望ましいのだろうとは思います。

また、監査法人にこういわれているが、本当にそうなんだろうか、という疑問
をお持ちになる場合もあるのではないでしょうか。その場合には、他の会計士
や監査法人にセカンドオピニヨンを求めたくなることもあるかと思います。

エキスパーツリンクでもそのようなご相談には対応できると思いますし、監査
人の変更については、上場会社については、対応できませんが、非上場会社の
監査であれば公認会計士紺野事務所でも対応させていただきます。上場会社で
監査法人の変更をご検討されている方は、色々ご紹介できると思いますので、
お声かけください。

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6.[編集後記]
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寝違えてしまいました。人生初といっていいくらいの痛みがありました。
たまに野球選手が寝違えたとかいって試合を休むことがありますが、そんなに
痛いかねえ?なんて勝手に思っていましたが、痛いですね。とても野球の試合
などできそうにありません。鞭打ちの人のように首を回すことができない状態
でした。なかなか治らないなと思っていましたが、ネットで寝違えた場合に速
攻で直す方法というのが紹介されていて、その通りに簡単な、運動?、という
より、ストレッチみたいなことをしてみると、確かに少し楽になりました。下
手にマッサージするよりは確実に効いているように思います。今は何かと便利
な世の中になりましたね。もうずいぶんと楽になりました。

公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。

トップページ
http://kaishaho-kansa.com/
個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/

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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA)inactive 紺野良一
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