【Weekly accounting journal】vol.156~不正監査の最終兵器!~
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.156-2012.10.23
☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆
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こんにちは、エキスパーツリンク/エキスパーツ税理士法人の紺野です。日本
の会計基準は、今、IFRSで揺れ動いています。一方で税制も改正されており、
上場会社及び上場準備会社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく
変化していきます。これらのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理
担当者の皆さん向けに、出来る限り分かりやすくお伝えします。仕事の合間に
軽くどうぞ!
文中意見にわたる部分は僕の私見にもとづきます。このメールマガジンの情報
をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等にご確
認ください。もちろん、エキスパーツリンク/エキスパーツ税理士法人でもま
ずは無料で検討させていただきます。
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【上場会社・上場準備会社グループ経営支援】
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税務専門家として、会社側の視点にたった各種支援を行っています。
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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[監査]不正監査の最終兵器!
2.[時事]日産自動車の中国収益計上方法の変更
3.[IFRS]PWCのIFRS会員制WEBサイト開設
4.[税務]海外子会社出向者の較差補填と留守宅手当
5.[税務]問題67
6.[編集後記]
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1.[監査]不正監査の最終兵器!
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不正対応監査基準って、こういうことだったんですね!良いか悪いかは別とし
て。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/kansa/20121018.html
金融庁の企業開示課長 栗田照久氏は「かなり重い手続きで最終兵器に近い。
被監査対象企業の監査人が不明瞭な取引について監査手続きを実施し、監査役
にも調査をしてもらい、それでも解明できない場合にする手続きと考えている」
とおっしゃっているそうです。
リーサルウェポンですか、、その最終兵器とは?
スキーム1 取引先に求める確認状に取引先の監査人による署名を求める。
スキーム2 取引先の監査人に連携依頼、取引先の監査人は調査結果を具体的
に監査人に報告する。
というものです。この他にもいろいろ検討されているのですが、詳細は上記
ご覧ください。
こういうことが必要な状況もありえるかもしれませんね。相手先と結託して
いる場合には確認状が事実を反映しないこともありえるわけですから、不正
をたくらんでいる輩にとって監査人の署名というのは大きな障害になるはず
です。また、確認状を偽造するなんてことも過去には行われたわけですが、
これも監査人の署名が必要となればそうはいかないですよね。
一方で、現場感覚として守秘義務はどうなるのか?監査人が確認状にサイン
するというのはより重い責任がかかってくるのではないか?といった不安、
疑問がわいてきます。
一方、日本公認会計士協会は、以下の意見書をだして反論しています。
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/jicpa_pr/news/post_1682.html
監査人による連携に関して、一部抜粋します。
「現時点では、費用対効果の観点からも懸念があり、その実施は困難」
「監査人間の連携は、被監査会社と取引先が共謀している場合は効果が少な
く、手続としての有効性が期待されるケースは限定されます。」
「照会を受けた取引先の監査人の監査への影響(不正の端緒として取り扱う
ことになる。)を考慮すると、場合によっては取引先の監査人がさらに他
の監査人に照会することも考えられ、その連鎖により波及的に社会全体で
負担する監査コストが膨らむことも想定されます。」
「監査人間の連携は、その適用により、不正の疑いに関する情報を取引先に
伝えることとなり、被監査会社及び相手先のビジネスに悪影響を及ぼす可
能性があります。例えば、結果的に不正がなかった場合、監査人が当該手
続を選択したことの妥当性を問われるおそれがあります。また、取引先の
監査人の調査によっても不正の存在が裏付けられなかったものの、結果的
に不正があったことが後日判明した場合、取引先の監査人は、自己の監査
意見に対する責任とは別に、当初の監査人、その被監査会社及び株主から
調査の妥当性を問われるおそれがあります。」
「監査人間の連携を海外の監査人に適用することは不可能であり、この制度
を導入したとしても、国内監査基準の適用を受ける監査人がいる場合にの
み実施可能となります。したがって、そのような手続を基準で示した場合、
海外経由又は監査人のいない取引先を介在させて不正を行うことを助長す
ることになりかねません。」
確かに。それらの影響は考えられますね。
ただ、「最終兵器」としてこれらの手続は用意しておくべきなのかもしれま
せん。
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2.[時事]日産自動車の中国収益計上方法の変更
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日産自動車が現地企業と合弁で営む中国事業の収益の計上方法の変更を検討す
るとのことですね。
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNZO4737769017102012DT0000
これは中国事業を「比例連結」から「持分法」に変えるということです。
ここで「比例連結」とは?
「被共同支配企業の資産、負債、収益及び費用の各科目に対する共同支配投資
企業の持分を財務諸表で類似する科目ごとに合算する、又は共同支配投資企業
の財務諸表で別個の各科目として報告する会計処理方法」
で、つまりBS、PLいずれも持分比率分だけ計上するというわけです。
例えばPLについて言えば
対象会社が
売上 200
売上原価 130
販管費 20
営業利益 50
だったとして、持分が50%だったとすると、
比例連結では
売上 100
売上原価 65
販管費 10
営業利益 25
となるはずで、
持分法なら
持分法投資損益(日本基準では営業外収益) 25
の一本となるはずです。
ところで、日本基準では比例連結は認められていないはずですが?日産は日本
基準では???
ま、これにより、米国基準のトヨタ、ホンダとの比較が行いやすくなるという
ことのようです。
2012年3月期で
トヨタ 営業利益 355,627百万円
日産 営業利益 545,839百万円
です。トヨタの持分法投資損益は税金等調整前当期純利益より下で計上されて
いますが、日産の中国事業は比例連結とのことですので、営業利益にもその比
例連結で計上された分が入り込んでいるわけです。この金額が営業利益の4分
の1とのことですから、136,459百万円も入っているということですね。この
分が持分法投資損益に入ってきますので、545,839百万円から409,379百万円
になるということで、トヨタとの差としては、53,752百万円(約5百億円)に
なるという計算ですね。
この比例連結はIFRSでも、廃止される方向です。共同支配企業に対する持分を
比例連結で処理した場合,フレームワーク上の資産・負債の定義を満たさない
項目が計上される可能性があるためといわれています。
ま、米国にあわせているんですよね。
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3.[時事] PWCのIFRS会員制WEBサイト開設
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あらた監査法人さんが、IFRSに関する専門的な情報を提供する会員制ウェブサ
イト「PwC inform」日本サイトを開設したというニュースです。
http://www.pwc.com/jp/ja/assurance/news-release/2012/pwc-inform121011.jhtml
IFRSに関する最新ニュースやPwCによる解説資料、IFRS基準書全文などの専門
的な情報を提供するウェブサイトとのことです。
無料ページもあるようですので、会員にならずとも要チェックですかね。
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4.[税務]海外子会社出向者の較差補填と留守宅手当
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よくお問い合わせを受ける気がしますので書いておきます。
海外子会社等に出向している従業員の給与を出向元が負担することが認められ
るのかということです。
基本的に出向者は出向先の業務の従事しているわけですから、出向者の給与は
労務の提供を受けている出向先法人が負担するべきです。この金額を出向元が
負担した場合、その負担することにつき合理的な理由がない限り、出向元法人
の出向先法人に対する寄附として扱われます。
この出向元が負担することについての合理的な理由に当たるものが、
「較差補填」と「留守宅手当」
です。
「較差補填」とは、出向先法人の給与ベースが出向元法人の給与ベースより低
いため、出向者について計算される給与の較差を出向元法人が負担するもので
す。
「留守宅手当」とは、
留守宅の家族に対して支払われるものです。
これらについては合理的な金額であれば損金算入が認められています(法人税
基本通達9-2-47)。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_09.htm
負担割合を50:50にするとか、子会社の利益水準をみて決めるとかいうことで
は認められませんが、これらのような合理的な数値を算出することで問題な
く損金算入できるわけですから、ぜひ検討してみてください。
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5.[税務]問題67
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[問67]
平成23年事務年度の法人税の実績から出題を試みます。
申告税額、申告税額の前年との比較、黒字申告割合の組み合わせとして正しい
のはどれ?
[答]
a.申告税額 12兆8,414億円
前年度より増加した
黒字申告割合 35.2%
http://clap.mag2.com/hesouwraga?a
b.申告税額 9兆5,352億円
前年度より増加した
黒字申告割合 25.9%
http://clap.mag2.com/hesouwraga?b
c. 申告税額 9兆5,352億円
前年度より減少した
黒字申告割合 25.9%
http://clap.mag2.com/hesouwraga?c
[前回の解答]
前回の正答はcです。
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6.[編集後記]
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税理士法改正の話はかなり声高に叫ばれていますよね。例の会計士の税理士登
録にあたり、税法科目に合格する必要があるとする改正の件です。ちょっと前
の会計士試験は、確かに日税連が指摘するような税理士合格のための一つの手
段となっていた面はあったのかもしれません。この改正が実現するかどうかは
さておき、税理士を志向する人にとっては、最近の会計士試験の合格者減少と
日税連要望による税理士法改正の「可能性」を考えると、会計士試験で税理士
登録することをもくろむという選択をする可能性はかなり低くなっているので
はないでしょうか。この時点である程度この要望の目的は達成されているよう
にも思います。一方で、独立を考える会計士というものは育ちにくい環境にな
りますよね。会計士は監査法人に入ってずっと監査してパートナーになること
を目標にするしかないのでしょうか?
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*発行人: エキスパーツリンク
公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA)
・ディスクロージャー上級実務士 紺 野 良 一
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