◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.270-2015.01.23
      
   ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は僕の私見にもとづきます。このメールマガジンの情報
をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等にご確
認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させていた
だきます。

◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]国際税務入門2
2.[監査]監査報酬実態調査
3.[最新J-GAAP]連結納税の税効果取扱改正
4.[最新J-GAAP]投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い
の改正
5.[税務]付加価値割における所得拡大促進税制
6.[編集後記]

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1.[税務]国際税務入門2
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また、国際税務担当の飯田の記事からです。

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所得に対する課税方式は、「全世界所得課税方式」と「国外源泉所得非課税方
式」という2つの方法があることがわかりました。我が国のほか、アメリカ
やイギリスなど、全世界所得課税方式を採用する国がある一方、フランスやシ
ンガポールのように、国外で稼いだ所得には課税しない国もあります。みなさ
んはどちらの方法が良いと思うでしょうか。実は、それぞれメリットおよびデ
メリットがあります。

国外源泉所得非課税方式では、国外で稼いだ所得に課税されることはありませ
ん。しかし、何が国内源泉所得なのか?という問題が生じます。例えばシンガ
ポールでビジネスを行う場合、何がシンガポールの国内源泉所得に該当するの
かという問題です。

何が国内源泉所得となるかについては、各国の税法により定められています。
我が国の法人税法138条では、以下の所得を国内源泉所得として規定していま
す。

(1)事業による所得・資産による所得・その他政令で定める所得
(2)人的役務の提供事業の対価
(3)不動産の賃貸料等
(4)預貯金の利子等
(5)配当等
(6)貸付金の利子
(7)使用料等
(8)事業の広告宣伝のための賞金
(9)生命保険契約に基づく年金等
(10)定期積金の給付補てん金等
(11)匿名組合契約等に基づく利益の配分

このうち、(4)の利子は債務者の居住国、(6)の利子はその使用地が源泉地で
あると規定されています。一般的に、(4)は「債務者主義」、(6)は「使用地
主義」とそれぞれ言われています。どの方法を採用するかによって、所得の
源泉地が変わることになります。

一方、全世界所得課税方式では、何が国内源泉所得なのか?という問題は生じ
ませんが、同一の所得に対して国内でも国外でも課税されることになります。
日本の会社が外国で稼いだ場合、その所得に対して当該国で課税されますが、
同時に日本でも課税されることになります。これを「二重課税」と言います。
このような問題を避けるため、全世界所得課税方式を採用する国では、「外国
税額控除」という制度が設けられています。外国で支払った税金を日本の税金
から控除します。という制度です。ただし、外国税額控除を行う場合、今度は
何が国外源泉所得となるのかが問題になってしまいます。少々難しい話になる
ので、この制度については別の機会で取り上げたいと思います。
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2.[監査]監査報酬実態調査
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監査人・監査報酬問題研究会は、2013年4月から2014年3月までの有価証券
報告書を対象として、監査報酬の実態調査を行っています。

これによると、

「本年度の調査では、日本の監査報酬の全体的趨勢として増加していることが
明らかとなった。この原因としては、2013年3月には企業会計審議会から「監
査における不正リスク対応基準」の公表とそれに伴う監査基準の改訂が想定で
きる。」

「今回の不正リスク対応基準の影響によって、全体として平均0.82百万円
(1.6%)の増加が生じたと考えられる。」

とされています。

【日本】
(平均)
2012年度  60.31百万円
2013年度  61.09百万円

(中央値)
2012年度  30百万円
2013年度  30百万円

ちなみに、2013年度の大手3監査法人と、その他の監査事務所の比較をしてみ
ると、

(平均)
大手3監査法人   61.44百万円
その他の監査事務所 31.81百万円

(中央値)
大手3監査法人   34百万円
その他の監査事務所 23百万円

大手3監査法人の平均値と全体の平均値があまり変わらないような感じですね。

【アメリカ】
(平均)
2012年度 214.45百万円
2013年度 220.76百万円
(中央値)
2012年度 70.42百万円
2013年度 75.53百万円

相変わらず大きな差がありますね。アメリカは平均で日本の約3~4倍、中央
値で約2~3倍というところでしょうか。

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3.[最新J-GAAP]連結納税の税効果取扱改正
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ASBJは、平成27年1月27日、平成26年度税制改正において、地方法人税が創
設されたことを受けて、

実務対応報告
「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」

及び

実務対応報告
「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」

の改正を公表しています。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/renzei2014/index.shtml

本実務対応報告は、平成26年度税制改正における地方法人税の創設に伴い記
載内容を改正するもので、連結納税制度を適用している場合の税効果会計の
考え方について変更を行ったものではありません。

改正された本実務対応報告は、公表日以後適用されます。なお、その適用につ
いては、会計方針の変更とは取扱いません。

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4.[最新J-GAAP]投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱
  いの改正
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日本公認会計士協会は、平成27年1月16日、平成26年2月における監査基準
の改訂及び同年4月における監査基準委員会報告書800「特別目的の財務報告
の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」の公表を受け、業種別
委員会実務指針第38号「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の
取扱い」について所要の見直しを行い、公開草案として公表しています。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/38_7.html

本実務指針は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成
するものである点は従前と変わりはありませんが、関連する監査基準委員会報
告書及び要求事項との関係を明示するなど、実務指針の構成等を併せて見直し
たものです。

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5.[税務]付加価値割における所得拡大促進税制
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外形標準付加価値割における所得拡大促進税制ってどれくらい効果があるんで
しょう?みてみましょう。

平成27年4月1日から30年3月31日までに開始する事業年度において、以下
の要件を充足した場合、雇用者給与等支給増加額を付加価値額から控除でき
ます。

(1)雇用者給与等支給増加額※1 / 基準雇用者給与等支給額 ≧ 「一定割合※2」
(2)雇用者給与等支給額 ≧ 前事業年度の雇用者給与等支給額
(3)平均給与等支給額 > 前事業年度の平均給与等支給額

※1 雇用者給与等支給増加額
= 雇用者給与等支給額 - 基準雇用者給与等支給額
※2 「一定割合」
  ・平成27年4月1日~28年3月31日開始事業年度は「3%」
  ・平成28年4月1日~29年3月31日開始事業年度は「4%」
  ・平成29年4月1日~30年3月31日開始事業年度は「5%」

平成27年度の付加価値割の税率は、0.72%
平成28年度の付加価値割の税率は、0.96%

ですので、雇用者給与等支給増加額を付加価値割から控除できるということは、

平成27年度で、雇用者給与等支給増加額×0.72%
平成28年度で、雇用者給与等支給増加額×0.96%

の事業税が減るということですね。

でも、事業税って、損金入るじゃないですか。ということは、税効果まで考え
ると、実際にキャッシュ・アウトが減るのは、これに(1-法定実効税率)を乗じ
た額なのではないでしょうか。

平成27年度で、
雇用者給与等支給増加額×0.72%×(1-0.3211)
=雇用者給与等支給増加額×0.489%
平成28年度で、
雇用者給与等支給増加額×0.96%×(1-0.3133)
=雇用者給与等支給増加額×0.659%

なのでは?ちっちゃいですね。

また、従来から、報酬給与額が収益配分額の70%を超える場合、「付加価値
額」から「雇用安定控除額(報酬給与額-収益配分額×70%)」を控除できる
という制度があります。

今回創設される「地方版 所得拡大促進税制」と「雇用安定控除」の特例の両
方が適用される場合、給与増加額が二重で系所されることになるため、その二
重控除を排除するための調整措置が、「地方版 所得拡大促進税制」の控除額
の計算において設けられます。

あまり恩恵がないような、、、。

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6.[編集後記]
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どうしても気になります。
今日は、イスラム国にとらえられた二人の日本人の身代金支払いの72時間の
期限が来ます。テロリストに屈するべきではない。人命最優先。この二つをい
ずれも両立させるということは非常に困難な問題です。
テロリストに金など払えば、新たなテロを生む。従って決して支払に応じては
ならない。しかしそれでは、人命救出はどうするのか。自己責任などという言
葉で一蹴してよいのか。今回の支援は、あくまでも、難民の医療や食料などの
人道支援であり、イスラム国との戦いを直接支援するものではないこと、また、
拘束されたジャーナリストは弱者の立場に立った報道を繰り返してきた素晴ら
しい人であり、二人は無実の人間であること、このような状況下での殺害は国
際社会全体を敵にまわす行為であること、を宗教上の実力者などを通じて伝え
るしかないのではないかと思います。基本的に条件を付けた交渉をすべきでは
ないと思います。
政府は二人が拘束されている可能性があることを事前に把握していたようです
ので、今回の支援表明にあたっては、より慎重な言葉づかいをすべきだったの
ではないかとは思いますが、人道支援自体は良いことだと思います。こうなっ
てしまった以上、これにより方針を撤回するようなことがあればまさにテロリ
ストの思うつぼです。一方で、日本国民もテロの標的となりうることが判明し
た今、今後の安全対策に万全を期す必要があることは自明です。

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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
*URL: http://www.expertslink.jp
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