◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.330-2016.03.21
      
   ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。

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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]移転価格文書(ローカルファイル)はどのように作成するのか
-機能及びリスク分析
2.[最新J-GAAP]税効果会計に適用する税率に関する適用指針出ました
3.[NEWS]東芝関連リンク集
4.[税務] 税制審議会が答申~中小企業の範囲と税制のあり方で
5.[編集後記]

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1.[税務]移転価格文書(ローカルファイル)はどのように作成するのか
-機能及びリスク分析
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移転価格分析においては、企業グループの全体像を理解したうえで、親会社及
び子会社の概要を理解し、機能及びリスクの分析を行います。

なぜ、機能及びリスク分析が必要なのでしょうか。

機能及びリスクの分析結果は、移転価格の算定方法や比較対象法人の選定に重
要な判断材料になるからです。

比較対象法人とは、検証対象企業と同程度の機能及びリスクを持った会社を言
います。平たく言えば、似たような会社のことです。

ここで過去の判例を紹介します。移転価格課税が税務訴訟となった事件で、比
較可能性が焦点となり、国が敗訴した事例(アドビ事件と呼ばれています)
です。

概要
ソフトウェアの製造販売会社であるアドビシステムズの日本法人(以下「アド
ビ」)は、当初海外の関係会社からソフトウェアを輸入・販売していました。
その後、ソフトウェアは海外の関連会社が直接日本の卸売業者等に販売し、日
本法人の機能は販売支援及びサポート業務を行い、その手数料を得る役務提供
業務に変更されました。取引形態の変更後に行われた移転価格調査では、比較
対象取引としてソフトウェアの再販売取引が採用されて課税が行われました。

第1審では国の主張が認められましたが、第2審では課税処分が取り消され、国
は控訴せず判決が確定しました。

争点
アドビ側は、取引はソフトウェアの販売支援(役務提供)取引であるので、売
買取引を比較対象取引として採用した課税は取り消されるべきであると主張し
たのに対し、国側は、アドビはソフトウェアの再販売取引と同じ機能を果たし
ている事実があるから、再販売取引と同様の利益を計上すべきであると主張し
ました。

判示
第2審では「本件国外関連取引は、卸売業者等に対して販売促進等のサービス
を行うことを内容とする役務提供取引と解することができる。一方、課税庁が
採用した比較対象取引は、グラフィックソフトを仕入れてこれを販売するとい
う再販売取引を中核とし、その販売促進のために顧客サポート等を行うもので
ある。したがって、機能において捨象できない差異がある。

収受すべき手数料にはグラフィックソフトの販売利益が含まれていないのに対
して、比較対象法人の売上総利益率には、グラフィックソフトの販売利益が含
まれている。この利益の額には再販売による利益金額が含まれる蓋然性が高い」
として、再販売取引は比較対象取引として採用できないことから課税を取り消
しています。つまり、検証対象となる取引が役務提供であれば、その機能に見
合った会社を比較対象とする必要があるということです。

取引の変更前に調査が行われていたら結果は違っていたと思いますが、機能及
びリスクの分析が十分でないと、移転価格の算定方法や比較対象企業の選定が
十分に行えず、納税者と課税庁との間で議論になることがあります。

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2.[最新J-GAAP]税効果会計に適用する税率に関する適用指針出ました。
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ASBJは、平成28年3月14日、「税効果会計に適用する税率に関する適用指
針」を公表しました。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/zeikouka2015_2/

以下、おさらいになります。やや端折って書きます。

○税効果会計に適用する税率について、
法人税、地方法人税及び地方法人特別税
→決算日において国会で成立している税法に規定されている税率

住民税(法人税割)及び事業税(所得割)
→決算日において国会で成立している税法に基づく税率

(1) 当事業年度において地方税等を改正するための法律が成立していない
場合(地方税法等を改正するための法案が国会に提出されていない場
合を含む。)
→決算日において国会で成立している地方税法等を受けた条例に規定
されている税率(標準税率又は超過税率) 

(2) 当事業年度において地方税法等を改正するための法律が成立している
場合
・改正地方税法等を受けて改正された条例が決算日以前に各地方公共
団体の議会等で成立している場合
 →決算日において成立している条例に規定されている税率(標準税
率又は超課税率)

・改正地方税法等を受けて改正された条例が決算日以前に各地方公共
団体の議会等で成立していない場合
ア 決算日において成立している条例に標準税率で課税することが
規定されているとき
   →改正地方税等に規定されている標準税率

     ィ 決算日において成立している条例に超過税率で課税することが
規定されているとき
   →改正地方税等に規定されている標準税率に、決算日において
成立している条例に規定されている超課税率が改正直前の地
方税等の標準税率を超える差分を考慮する税率

 この最後の「~差分を考慮する」方法として二つ挙げられています。

改正直前の地方税法等の標準税率 a
決算日において成立している条例に規定されている超過税率 b
改正地方税法等に規定されている標準税率 c

c+b-aとする方法

 c*b/aとする方法

 の二つです。いずれも制限税率は超えないものとされています。

なお、(東京都など)地方公共団体によっては、過年度から継続的に地方法人
特別税の税率を考慮して超過課税による税率を決定している場合があります。

この場合は、事業税プラス地方法人特別税のレベルで、c*b/aの方法を適用す
ることも考えられるとされています。

○適用時期について
平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連
結財務諸表及び個別財務諸表から適用します。

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3.[NEWS]東芝関連リンク集
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また新たな火種です。トーマツにも火の粉が飛んだようですね。
https://nobuogohara.wordpress.com/2016/03/14/%E6%9C%80%E7%B5%82%E5%B1%80%E9%9D%A2%E3%82%92%E8%BF%8E%E3%81%88%E3%81%9F%E6%9D%B1%E8%8A%9D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E4%B8%8D%E7%A5%A5%E4%BA%8B%E3%82%92%E5%B7%A1%E3%82%8B%E3%80%8C%E5%B4%96%E3%81%A3%E3%81%B7/

こちらで言及されているのは、「文芸春秋の記事に書かれていることが真実だ
とすると、東芝は、新日本に会計監査を任せる一方で、競合する大手監査法人
であるトーマツの子会社から、新日本の監査意見に対抗するための「工作」の
伝授を受け、会計不正が発覚するや、その不正調査に、会計監査対策に関わっ
ていたトーマツ傘下の公認会計士を起用したことになる。」ということです。

会計上の助言を授けることはあってよいと思いますが、その当人が第三者委員
会に入っちゃいけないですよね。反論が出てくるのか。推移を見守りたいと思
います。

また、東芝にも余罪があったようです。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD15H7A_V10C16A3TI1000/

新たな不適切会計7件で58億円。もともと内部統制がなんにもできていなかっ
たということなのではないでしょうか。

こちらも面白いですね。
東芝メディカル売却に、富士フィルムが「待った」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/031600286/?P=1

東芝メディカルの売却先は富士フィルムが有力とみられていたようです。そん
ななかでキャノンに独占交渉権とはどういうことなのか?しかも28年3月まで
に売却益を計上する?そんなこと独占禁止法上の規定に従った手続を正しく踏
んでいたらできないでしょ?ということで質問状を出しているようです。東芝
は回答しないようですが。確かに、この指摘は正しいように思います。東芝は
3月までに売却益を計上するのであればキチンと説明する必要があるように思
います。富士フィルムは面白くないんでしょうね。こんな質問状なんて、聞い
たことないように思います。

その富士フィルムは新日本からあずさに監査人を変更するようですね。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO98430060U6A310C1TI1000/

ウェスチングハウスの減損に関する記事です。
http://www.asahi.com/articles/ASJ3K7JG5J3KULFA035.html

「関係者によると、早ければ2016年3月期に実施する可能性もある」という表
現が微妙です。意図的に時期をずらせるようなニュアンスを感じます。

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4.[税務]税制審議会が答申~中小企業の範囲と税制のあり方で
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これは重要だと思います。

税制審議会は3月17日、「中小企業の範囲と税制のあり方について」に対する
検討結果を取りまとめ、神津会長に答申しました。
http://www.nichizeiren.or.jp/taxpayer/info.html#160318

税制審議会は、日本税理士会連合会会則に基づいて設置された会長の諮問機関
で、学識経験者及び税理士によって構成されています。単年度ごとに発せられ
る会長の諮問に応じ、税制並びに税務行政全般について調査・審議を行い、そ
の結果を会長に答申します。この答申は、日本税理士会連合会が、毎年、関係
省庁に提出する税制改正建議書に反映されています。

ここでは、中小法人の範囲のあり方について、

「~従業員数基準についての課題を検討した上で、さしあたり資本金の額と従
業員数を組み合わせた指標により中小法人の範囲を定めることが適当である。
ただし、このような指標によっても現行制度の問題点が解決されない場合には、
資本金と資本準備金を組み合わせた指標又は法人税法上の資本金等の額を基準
とするなど、他の方法を検討する必要がある。
なお、大法人が形式的な減資を行って中小法人になるという問題に対しては、
その減資を行った後、一定期間について中小法人税制を不適用とするなどの措
置を講ずることが考えられる。」

と言っています。税理士業界からは、資本金と従業員数を基準とする案が出て
きたことになりますね。

また、中小法人に対する税制のあり方についても、以下のように記述されてい
ます。

「税率及び課税ベースの両面において、また、法人事業税の課税方法等におい
て中小法人には大法人と異なる税制を措置することが重要である。」
としつつ、

「~法人の規模の区分では大法人に該当する場合であっても、事業の実態か
らみて一定規模以下の中堅企業については、大法人と異なる視点からの税制を
検討し、その負担軽減に資する措置を講ずる必要がある。」

としておりまして、中小企業以外は十把一絡げに扱うのではなく、さらに「中
堅企業」という区分を設けるべきではないかという視点ですね。

あまり複雑になりすぎるのはどうかと思いますが、うなずける内容と思います。

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5.[編集後記]
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なんですか、眠くてたまりません。
確定申告シーズンが終了しつつあってほっとしていることや、花粉症の薬のせ
いもあるんでしょうけれども、そもそもやっぱり春は眠い、ですね。ちょっと
調べると、春には「自律神経」のバランスの乱れ?があるようです。また「自
律神経」ですか。私は慢性的にじんましんが出る(最近ちょっとおさまってま
す)のですが、これの原因の一つにもやはり「自律神経」の乱れがあるといわ
れています。春の眠気の原因も「自律神経」だそうです。「自律神経」には
「交感神経」と「副交感神経」があって、昼活発になるのが「交感神経」、夜
活発になるのが「副交感神経」だそうです。これが「乱れ」ると、夜「交感神
経」が働いたり、昼「副交感神経」が働いたりしてしまうようですね。後者が
昼の眠気につながるわけでしょうね。要は、暖かかったり、寒かったりするか
ら神経がぼけてしまうということでしょうか。桜が咲いて、春全開になるころ
には、夢から覚めるということでしょうか。早く冬眠から目覚めなければいけ
ませんね。動物みたいですが。今日、東京は桜の開花が宣言されました。

公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。

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個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/

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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
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