◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.307-2015.10.12
      
   ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。

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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[最新J-GAAP]税効果会計の税率変更はいつから?
2.[税務]多国籍企業に納税報告義務
3.[税務]国際課税に関する経産省の研究会
4.[税務]雇用促進税制の特例
5.[編集後記]

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1.[最新J-GAAP]税効果会計の税率変更はいつから?
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ASBJは9月24日、第25回税効果会計専門委員会を開催しています。
そのなかで、公布日基準の見直しに関する具体案が示されています。

現行の基準では、税率改正を伴う改正税法が決算日までに国会で成立していて
も、公布が決算日後であれば、税効果会計に適用される税率は旧税率のままで
す。

平成27年3月では、税法自体は公布されましたけど、東京都などの条例の公
布が4月1日になっていました。この場合に適用すべき税率として、ASBJか
ら提示されていたのは、新条例の税率をそのまま用いるのではなく、旧税率
をもとに新税率を推測するというやり方であったため、平成27年3月期の
四半期末、年度末決算においては、4月1日に新税率の条例が公布されていた
にも関わらず、新税率をおおっぴらには使えないという、ちょっと、疑問の
残る対応になってしまいました。

これに対して今回の案はどうなのでしょうか。

まずは国税

税率改正を伴う改正税法が「国会で成立した日」から当該影響を反映させる方
法に見直すことを提案しています。

次に地方税
こちらは二つの案があるようです。
・条例が地方団体の議会で成立した日
・地方税法が国会で成立した日

さらに、標準税率と超過税率の問題は以下の提案があるようです。

・改正地方税法に基づく改正条例が決算日に成立している場合,標準税率およ
び超過課税による税率とともに,決算日までに確定している税率を用いる。

・改正地方税法に基づく改正条例が決算日に成立していない場合,標準税率は
改正後の地方税法によるものを適用するが,超過課税による税率については,
決算日現在の地方団体の条例に基づく超過課税による税率が標準税率を超え
る差分を考慮した税率を用いる。

最終的にどうなるのか、引き続き見守りたいと思います。

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2.[税務]多国籍企業に納税報告義務
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いわゆるBEPS(税源浸食と利益移転)関連の動き、整理しておきましょう。

OECDは、平成27年10月5日、多国籍企業の行き過ぎた節税を防ぐための国際
的なルールをまとめた報告書を公表しました。
http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/oecd-presents-outputs-of-oecd-g20-beps-project-for-discussion-at-g20-finance-ministers-meeting-japanese-version.htm

OECDは経済協力開発機構といって、先進国中心の34か国で構成されるもの
です。

新ルールでは、
・タックスヘイブンで稼いだ利益にも適切に課税
・特許を子会社に格安で譲った親会社に追徴課税
・子会社への利払いに対する税優遇を制限
・国内に倉庫があるネット通販会社に課税できるように
・税理士に節税策の報告義務
・二年を目安に二重課税の解消をめざす

などが適用されます。このルールはOECD加盟国含め、44か国です。これに
基づいて各国が国内法を手直しするわけです。

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3.[税務]国際課税に関する経産省の研究会
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上記2.のとおり、国際課税の新ルールが策定され、今後国内法がどのよう
になるか注目されるところですが、経済産業省の「日本企業の海外展開を踏ま
えた国際課税制度の在り方に関する研究会」が、
(1)日本企業の海外事業活動の進展の実態と整合的で、(2)移転価格税制の強化
や法人税引下げ等税制全体を展望した国際租税の在り方について、タックスヘ
イブン税制を中心に検討を行っております。

http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/kokusaisozei/cfc/cfckenkyukai.html

中間論点整理はこちら
http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/kokusaisozei/cfc/PDF/chukanrontenseiri.pdf

多岐にわたる検討がなされているのですが、1点だけご紹介しておきます。

「欧米を中心に議論が展開されている BEPS プロジェクトを、日本にそのま
ま適用することについては日本の企業実態や CFC 税制の位置付けを踏まえて
十分な吟味をする必要があるのではないか。」

「BEPS プロジェクトは、現状の税制を改善することでアグレッシブなタック
スプランニングを防ぐといった、法学的なアプローチが中心。一方、日本の国
際課税制度を考えるときには、日本企業の海外進出の実態、実態に則した実証
的な分析、産業政策の在り方を意識して、国民の経済効率を高めるために最適
な制度を構築することが必要ではないか。」

「各国における BEPS の捉え方は、各国の立場で大きく異なる。各国において
ある程度調和した制度にならなければ、最終的にイコールフッティングの観点
から企業が影響を受ける。このため、BEPS 行動計画の報告書を踏まえた各国
の動向を見ていかなければならない。」

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4.[税務]雇用促進税制の特例
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ふりかえっておきましょう。
雇用促進税制は、

雇用者増加数5人以上(中小企業は2人以上)、かつ、雇用増加割合10%
以上等の要件を満たす企業は、
適用年度における法人税の額(個人事業主の場合は、所得税の額)から雇用者
増加数1人当たり40万円の控除が受けられるというものです。

法人税の額(個人事業主の場合は、所得税の額)の 10%(中小企業の場合は、
20%)が限度ですけど。

これに特例が出来ています。以下基本的に週刊税務通信No3378をもとにまと
めます。

特例は、「地方拠点強化税制」の一つです。具体的には、

地方にある企業の本社機能の強化(拡充型)
 や
東京23区から本社機能の移転(移転型)

を行った場合に、

「オフィス減税」(特別償却や税額控除)
 や
「雇用促進税制の特例」

が適用できるのです。

「雇用促進税制の特例」は、

改正地域再生法の施行日(27年8月10日)から30年3月31日までの期間内に、

地方自治体が設定した対象地域(地方活力向上地域)において

「特定業務施設」を整備する計画について、都道府県知事の認定を受けた法人
(認定事業者)を対象としています。

計画の認定日からその翌日以後2年を経過する期間内の日までの事業年度が適
用年度となります。

特例は二つあります。

(特例1)
⇒拡充型計画又は移転型計画の認定を受けた法人に対する特例

下記の要件等を満たす場合に、「特定業務施設」における増加雇用者数(地方
事業所基準雇用者数)に50万円を乗じた金額の税額控除ができます。
下記の(2)の要件を満たさない場合にも増加雇用者数に20万円を乗じた金額の
税額控除ができます。

(1)基準雇用者数が5人以上(中小企業者等にあっては、2人以上)
(2)基準雇用者割合が10%以上
(3)給与等支給額が比較給与等支給額(前期の給与等支給額+(前期の給与等支
給額×基準雇用者割合×30%))以上
(4)同税制の適用を受けようとする事業年度及びその事業年度開始の日前1年
以内に開始した各事業年度において、事業主都合による離職者がいない

この地方事業所基準雇用者数ですが、これは、
・特定業務施設における新規雇用者だけでなく、
・それ以外の施設(本社や他の事務所等)からの「転勤者」も含まれます。ただ
し、地方事業所基準雇用者数には上限があり、法人全体の増加雇用者数(基
準雇用者数)までとなります。

これは、従来型の雇用促進税制と併用ができます。

法人全体の増加雇用者数20人
特定業務施設の増加雇用者数(すべて転勤者)15人
であれば、40万円×(20人-15人)+50万円×15人=950万円

法人全体の増加雇用者数10人
特定業務施設の増加雇用者数(すべて転勤者)15人
であれば、50万円×10人=500万円
といった具合です。

(特例2)
⇒移転型計画の認定を受けた法人に対する特例
特例1の適用を受ける又は受けたものが、特例1の適用後3年間にわたり適
用できるものです。

特定業務施設の増加雇用者数の累計(地方事業所特別基準雇用者数)に30万円
を乗じて計算した金額の税額控除を受けることができます。そしてこの地方
事業所特別基準雇用者数は、法人全体の増加雇用者数を上限とするような制
限はありません。

さきほどの例と同じ
法人全体の増加雇用者数10人
特定業務施設の増加雇用者数(すべて転勤者)15人
であれば、
特例1で、50万円×10人=500万円
さらに
特例2で、30万円×15人=450万円
で初年度で950万円の税額控除ができ、さらに、2年目3年目も450万円ずつ
税額控除がとれるというわけです。

ただし法人全体の雇用者数又は特定業務施設の雇用者数が減少した場合、そ
れ以後の事業年度では特例の適用を受けられません。

上限については、

特例1は、法人税×30%-従前からの雇用促進税制分-オフィス減税分
特例2は、法人税×30%-従前からの雇用促進税制分-オフィス減税分-特例1分

となります。

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5.[編集後記]
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マイナンバー対応始めてらっしゃいますか。

平成27年10月から通知カードがお手元に届きます。具体的には世帯ごとに世
帯人数分の通知カード、個人番号交付申請書、返信用封筒等が封入された簡易
書留が届きます。これを用いて個人番号カードの交付を申請することになりま
す。これに顔写真を添付して返信用封筒で送り返して個人番号カードを申請す
るわけです。この写真なんですが。

・スマホで自撮りした写真を通知カードについているQRコードを読み取ること
でokです。
・街中の証明写真機で個人番号カードの申請ができるようになりつつあるよう
です。

個人番号カードの申請は義務ではないのですが、私は一応申請してみようと思
っています。家族全員で。
聞くところによると、最終的に個人番号カードの交付を受けるときには、市区
町村の役所窓口で顔認証のシステムで、個人番号カードの写真と本人の顔を照
合するそうです。ですから、変装とか、プリクラでの修正をしたいわゆる奇跡
の一枚的なものとかは、この顔照合の段階ではじかれる可能性があるようです。

公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。

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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
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